周産期医療センター10年間のあゆみ

精神科との連携

戻る

次へ

精神科との連携

精神神経科   伊東恵子、 前田宏章

1. はじめに
 こども病院の周産期センター産科病棟は、通常の経過をたどらない妊産婦のための医療看護施設である。すなわち、妊娠の過程で異常が発生する、胎児に異常所見がある、分娩の経過中危機状況が生じるなどで、これらの異常状況が妊産婦にあたえる精神的影響は多大である。精神科ではここに入院中の妊産婦に伴うさまざまな心理的問題や精神症状に対してメンタルケアを行っている。

2. 産婦のかかえる精神的問題
 1996年11月から2002年12月まで、産科医師や看護助産スタッフから依頼があり関わった妊産褥婦の件数は合計251人でそのおもな問題(重複含む)については以下のようで ある。



  (ことがら)
緊急転入院
妊娠経過異常
多胎、若年高年妊娠
分娩法選択
緊急手術
胎児異常
死産、新生児死亡
新生児異常
人間関係(同室者、病棟スタッフ)
人間関係(家族、親戚)
前回妊娠分娩異常、前回胎児異常
育児不安、かわいく思えない
マタニティーブルーズ
産後精神病
産後抑うつ


  (おもな精神症状)
状況理解困難、医療機関への怒り
不安、困惑
過度の不安
決定困難、不安
困惑、受容困難
罪業感嫌悪感
悲哀、絶望
悲哀、罪業感、受容困難
疑惑、羨望、被影響性
共感してもらえない、孤立感
過度の不安
不安罪業感抑うつ
流涙、うつ気分、不眠
多弁、躁状態、興奮、被害年慮、不眠
うつ、感情平板、食思不振、不眠


(人)
19
36
39
12
10
51
49
34
42
14
13
15
28
3
10


 他の精神科医療機関紹介となったのは8例で、産褥期に出現した不眠、興奮、妄想などの精神病症状を呈し転院したものや、摂食障害や不安発作があり居住地近辺の診療機関に紹介した例などである。退院後精神科外来で継続したのは45人である。マタニティーブルーズの症状が退院時に残存し経過観察を要した例、死産や新生児死亡による死別反応が遷延し、抑うつ感情や死児への追憶が長期に続く例、 産後の生活適応がしにくく、意欲低下、食思不振、不眠、 頭重感や漠然とした不定愁訴などを訴える例など全体に産後の抑うつ傾向としてとらえられる例が多い。また出生児が低出生体重児や心身に障害のある場合、その受容が困難な例、夫や親戚との人間関係がうまく保てなくなった例、その他であった。

3. 現在の取り組みの概要
 (1) 産科医師、看護助産スタッフの要請により、スタッフの対応だけでは困難と思われる心理的な問題をもつ妊産婦について、精神科医が関わり、状況に応じて精神療法的アプローチ、投薬を行う。
 (2)依頼のあった妊産婦については、その都度、精神科的所見を担当医、看護助産スタッフと情報提供や意見交換をし、今後のアプローチの仕方を検討する。またスタッフから受け持ちの妊産婦についてのコンサルテーションに応じる。困難な症例については随時カンファレンスをもつ。


戻る

次へ

目次 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26

このページのトップへ戻る